四水転空
キト伝説2011




水おどしが居座ってはや三日、このままでは水がなくなってしまう!三吉と少年たちは思った。高鷲を自分たちで守ろう!自然がくれた水を大切にしよう!ほうほう、高鷲の子供はいい子ばかりじゃのう。 

どの家でも溜めておいた水をすこーしづつ使ったり、余計な水はなるべく使わんように工夫したりして来る日も来る日も我慢した。ところが水は戻るどころかどんどん減ってゆくばかりだ。考え抜いた挙句、三吉は山の守り神に会う決心をした。 

サヌザ岩に登って、ウヌラの耳と紅葵の芽を持った少年は、こう叫んだ!
「キト、マドゥキリ、アヌーア、ゼハ!」
激しい風と地鳴り、そして一点を矢のように突き刺す光、その光の中から大きな大きな鷲がゆっくり回りながら降りてきた。高鷲の守り神、キトの降臨じゃ。

「私を呼んだか、少年」
「うん、キト、水おどしっていう悪霊を退治したいんや。そいつのおかげで村の水がなくなってしまいそうや。助けてくれ、キト!」
「水おどしは決して悪い精霊ではない。」
「んだけど水は減ってゆくばかりじゃ、もう六日経つけど一向に止まらないんだ。」
「これは・・・水おどしを封じなければならなくなるかもしれない。三吉少年よ。陀羅の樹里斗寺へ行き、四水転空の巻物を取ってきてくれないか。ただし、明日の日の出に間に合わなければならぬ。よいな。」
「わかったよ、キト!」


三吉少年はおばぁにキトの事を話すとこう言った。
「お前は神に仕える選ばれた子じゃ。最後までやり抜くのじゃ。」
「うん!行ってくる!」 

三吉は一目散に走った。これ以上は早く走れないほど速く、早く走った!四水転空の巻物をキトに届けるのだ!がんばれ!三吉!! 
その頃村では水という水がなくなりかけていた。井戸も殆ど枯れ、川の水もまるで糸のようにか細かった。たまりかねた村の衆は総出で分水嶺へと向かうところじゃった。手には鍬や斧を持って、正気で未知の敵と戦うつもりじゃった。
そこへおばぁが間一髪現れ宥め伏せた。

「みんなよーく聞くのじゃ。水おどしにはそんなもんじゃ歯が立たぬわ。相手は魑魅魍魎じゃ。ここは三吉に任せておけばよい。」
村人たちはおばぁの言葉を信じ、思い思いに三吉の無事を祈り始めた。




三へと続く